輻射熱の解説

輻射熱(放射熱)とは?伝熱の仕組みや特徴について

西山 大貴

九州大学工学部卒業。輻射式冷暖房「F-CON」の製品開発や国内外の熱負荷計算業務に従事。

輻射(放射)は温熱環境を構成する6要素のひとつで、人の温冷感に影響を及ぼします。

赤外線を介して伝熱する輻射は、目に見えないのでイメージしにくいものの、誰もが体感している熱の伝わり方です。

太陽の光が宇宙を通って地球を暖める現象も、暖まった地球の熱を宇宙に放出する現象(放射冷却)も、輻射によるもの。地球と宇宙の間で熱の出入りが繰り返されることで、地表は適温に保たれています。

また、私たちの身の回りに存在するあらゆる物質は遠赤外線を発し、室内でも壁や天井などの輻射熱が温熱環境を左右します。

身近な輻射熱の例

つまり、輻射熱(放射熱)のバランスを整えることも、住みよい空間を構築をする上ではとても大切です。

このページでは輻射式冷暖房にも応用されている輻射の定義や、その伝熱の仕組みを解説します。

輻射熱(放射熱)とは

輻射熱(放射熱)とは、離れた物体間において赤外線を介して伝わる熱のことを指します。赤外線(近赤外線〜遠赤外線)は熱を運ぶ性質があり、輻射熱(放射熱)は温度の高い方から低い方へ伝わります。

屋外環境では、焚き火に近づくと暖かく感じたり、洞窟に入ると涼しく感じる現象が輻射熱によるものです。

夏の洞窟のひんやり感
冬の日なたのぽかぽか感

室内環境では、ストーブや電気ヒーターなどが輻射熱を利用した身近な暖房器具となります。昨今では、室内の快適性や健康性の観点から、輻射熱(放射熱)を応用した輻射式冷暖房が注目されています。

詳しくは「輻射式冷暖房とは?仕組みやエアコンとの違いを解説」へ

熱移動の三原則

熱の伝わり方は伝導・対流・輻射(放射)の3種類に分けられます。

熱移動の三原則
熱移動の三原則

伝導

伝導とは、物質を介する熱の伝わり方です。例えば、熱いお茶が入った湯飲みを持つと、湯飲みに触れた手が熱さを感じる仕組みです。身近な例では、湯たんぽや熱冷まし用に身体に貼る冷却シートなどが熱伝導を応用しています。

対流

対流とは、液体や気体の流れに乗った熱の伝わり方です。例えばエアコンは、暖かい風や冷たい風を空気中に送り、空気が動くことで温度を感じることができる製品です。

輻射

輻射とは、物体を介さずに赤外線を介して離れたところに熱が伝わる伝わり方です。室内ではストーブやこたつ、電気ヒーターなどの暖房器具や、風のないエアコンとして支持を得ている輻射式パネルなどが輻射を応用しています。

輻射の由来

物体はそれぞれの表面から放射状にエネルギーを発しています。その放射状に発する様子が牛車などの輻に似ていたから「輻射」と名付けたと言われています。

輻射が認知された当時、日常使用する漢字の中に輻という文字がなかっため、しばらくは「ふく射」と表記していました。その後、放射という言葉が使われるようになり、現在は放射と輻射が混在している状況です。

一般的に、専門書や論文や設備設計の書籍には放射が使われることが多く、日常生活では輻射が使われることが多いです。

輻(スポーク)
輻(スポーク)

輻射熱(放射熱)の伝熱の仕組み

輻射熱(放射熱)は遠赤外線を介して移動するため、輻射(放射)と遠赤外線はよく一緒に言及されます。

遠赤外線は、金属以外の多くの物質に非常に吸収される性質を持ちます。すなわち、遠赤外域は熱エネルギー(輻射エネルギー)として物質を暖める、とも言いかえることができます。

詳しくは「放射エネルギーとは?計算式や特徴について」へ

遠赤外線とは

遠赤外線は電磁波の一種で、波長の範囲が3μm~1000μm(1mm)の赤外線のことを指します。JISでは下記の通り定義されています。

物質などに吸収されると、他の様態のエネルギーに変換されることなく、直接的に分子や原子の振動エネルギーや回転エネルギーに変換される波長域の赤外放射。 

出典:遠赤外線用語(JISZ8117)

電磁波の波長と分類

遠赤外線を含む電磁波は、波長によってX線や紫外線、赤外線などに分類され、それぞれ異なる特性を持ちます。身近な例では、オーブントースターは赤外線、電子レンジはマイクロ波という電磁波でそれぞれ物を温める機能を有しています。

電磁波の波長と分類
電磁波の波長と分類

電磁波の波長とエネルギー

一般的な輻射式冷暖房で流れる冷温水の温度は、7℃~50℃(280[K]~323[K])です。

下図からこの温度の範囲を読み取ると、波長が約3μmから45μmのエネルギーを発していることがわかります。約3μmから45μmのエネルギーは、遠赤外線に分類されます。

また、人の体温の平均を約36.5℃(309.5K)とすると、その波長も遠赤外線の範囲に含まれます。つまり、普段目に見えないから感じ取ることが難しいですが、人もまた遠赤外線を発していることがわかります。

以上のことから、人体を含めて室内のあらゆるものが遠赤外線を発しており、高温な物質から低温な物質へ輻射熱(放射熱)が移動しているのです。

遠赤外線は電磁波の一種であるため、健康リスクに対するご質問を受けることが多いですが、上述の原理から遠赤外線による健康リスクは不安視しなくても大丈夫であることがわかります。

遠赤外線を放射する物質

遠赤外線をよく放射する物質は、遠赤外線(放射)をよく吸収する物質でもあります。

例えば、水、天然および合成樹脂、ゴム、塗料、木材、繊維、紙、各種動物性・植物性食材、ガラス類、天然および人工セラミックス類が遠赤外線をよく放射・吸収する物質です。

素材名放射率
皮膚(人)0.98
プラスチック0.85~0.95
材木0.90
0.70~0.94
ガラス0.85~0.95
セラミック0.90~0.94
0.92~0.96
鉄(光沢有り)0.14~0.38
ステンレススチール(光沢有り)0.07
出典:放射率一覧 / オムロン

輻射熱(放射熱)の特徴

効率的(= 省エネ)

輻射(放射)による伝熱は、対流のように空気を介さないので伝熱効率が比較的高いです。

シュテファン・ボルツマンの法則では、輻射による伝熱エネルギーは放射体の絶対温度の4乗と吸収体の絶対温度の4乗の差に比例するのに対し、対流による伝熱エネルギーは加熱物と被加熱物の温度差に比例すると定義されています。

つまり対流は、断熱材にも使われる空気を循環するので加熱や冷却の効率が良いとは言えないことに対し、輻射は伝熱効率がよく短い時間で加熱や冷却が可能で、無駄な熱移動も少ないということになります。

衛生的

輻射(放射)による伝熱は、対流のように空気を流す必要のない静かな伝熱が可能です。

無風であることは、ほこりの浮遊やウィルスの拡散などを防ぐことができ、衛生的であることにつながります。

まとめ

輻射熱(放射熱)には以下の特性があることがわかりました。

  • 輻射熱(放射熱)は、空気を介さずに遠赤外線を介して伝わる熱のこと
  • 輻射熱(放射熱)は、温度の高い方から低い方へ伝熱する
  • 金属以外の物体は、概ね熱を輻射(放射)している

これらの特性を活かして室内の温熱環境にアプローチする冷暖房器具を、輻射式冷暖房と呼びます。

詳しくは「輻射式冷暖房とは?エアコンとの違いやメリット・デメリットを解説」へ

輻射熱についてさらに詳しく知りたい方は、下記の放射エネルギーに関する解説記事を合わせてお読みください。

詳しくは「放射エネルギーとは?計算式や特徴について」へ

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