輻射式冷暖房の導入を検討する際は、デザインや価格といった見えやすい(表層的な)特徴を注視しがちですが、輻射式冷暖房の効果を最大限享受するためには本質的な比較条件を重視すべきです。
なぜなら、輻射式冷暖房は「ビルダーフリー」であるがゆえ、どのメーカーを選定しても導入可能な反面、「建築側との調整」が必要となるためです。
この「建築側との調整」がおろそかになると、高性能な輻射パネルを設置してもその性能を発揮することができず、様々なトラブルの要因につながってしまいます。
本記事では、輻射式冷暖房の導入で失敗しないために必要な4つの比較条件について詳しく解説いたします。
また、無料でダウンロード可能なチェックリストを用意しておりますので、輻射式冷暖房メーカーの比較検討・選定にお役立てください。
目次
最適なメーカーを選定するための4つの本質条件
輻射式冷暖房メーカーを選定する際は、4つの本質条件から比較することを推奨します。
- 性能条件
- 設計条件
- 施工条件
- 保証条件
輻射式冷暖房は、その快適性・健康性で注目を集めている次世代型の空調ですが、新しいがゆえに規格が未整備であったり、製品設計や施工のルールが曖昧で、導入トラブルが誘発されやすいのが現状です。
そのため、見た目の特徴やブランドイメージといった表層的な条件ではなく、輻射式冷暖房の導入でトラブルが起こらないように本質的な条件をしっかり比較することで、輻射式冷暖房の恩恵を受けることができます。
続いて、4つの本質条件について詳しく解説します。
性能条件
実測試験の有無
輻射パネルには、性能測定においてJIS規格が定められていないため、実測値ではなく推測値で性能提示しているメーカーも見受けられます。
推測値の場合、導入後に数値通りの性能が出力されず、エアコンを増設するといったトラブルの要因になりかねません。
輻射式冷暖房メーカーを選定する際は、実測試験の有無や、性能提示が実測値であることを確認しましょう。
弊社は自社環境試験室で放熱特性試験を実施し、すべて実測値に基づいた性能仕様書の提示や各種データの提供を行っています。その結果、大手ゼネコンや設備設計事務所をはじめ、多くのクライアント様から高い評価を得ています。
詳しくは「F-CONの性能評価例」へ
輻射パネルの性能
輻射パネルの性能は、冷房と暖房のそれぞれの冷暖房能力である(W)ワット数が重要で、特に輻射(放射)熱の性能特性が高いものを選ぶことが重要です。
しかし、輻射パネルと謳っていながら輻射性能が高くない、高性能と謳っていてながら数値的根拠が乏しい輻射パネルメーカーが多く見受けられるのが現状です。
特に注視すべきは、仕様書等の欄外にある小さな注意書きの部分です。
例えば、冷暖房能力の測定条件が同じ冷房時2000Wと表記されていても、室内測定条件が25℃か28℃かで、冷房性能は大きく異なります。
室内の温度の高いほうが、冷たい輻射パネルからより熱を奪うため、上記のケースでは25℃で2000Wである輻射パネルの方が優秀という結果になります。
なお、暖房は室温の測定条件が高い方が、より暖房能力が高いことになります。
まずは冷暖房能力が高いパネルを。次いで輻射(放射)熱の効果が高いものを選びましょう。その数値比較を行う際は、その冷暖房能力が記載されている仕様書欄外の測定条件も確認してください。
弊社は、熱流体解析(CFD)でシミュレーションだけでなく、実際に試作・改善・検証を繰り返すことで、輻射式冷暖房として最適な素材・形状を見極め、輻射パネルの性能向上に努めています。
詳しくは「輻射パネルの性能を正しく比較検討するために」へ
輻射パネルの流水部の耐久性
輻射パネルは高額ですが、50年以上の長期利用できれば費用対効果が高まります。
そのため、輻射パネルの耐久性を担うもっとも重要な部分がパネル内部の流水部の配管は重要です。
流水部に使われる配管の材質はほとんどが鉄・銅・アルミ・ステンレス、もしくは非金属の樹脂になります。
金属は様々な腐食(孔食(ピンホール)や潰食、ガルバニック腐食)があり、特に業務用の水道水を輻射パネルに流す場合は注意が必要です。
輻射パネルの耐久性は、コストパフォーマンスに直結する部分です。金属でも鉄は水中の空気に弱かったり、銅管も一部の自治体ではネットでも孔食による水道管への利用の注意喚起を行っていたりしますので流水部の素材を確認しましょう。
弊社は日本で唯一、耐久性の高い素材として流水部の配管にステンレスを採用し、特許(特許第6694199号)を取得しています。また、流水部以外にも上述の腐食を回避するためにさまざまな工夫をしています。
詳しくは「輻射パネルの選び方」へ
設計条件
熱負荷計算の有無
輻射式冷暖房を導入する際に熱負荷計算を実施していない場合、効き目のトラブルや電気代高騰の一因になります。
また、熱負荷計算の実施を謳っているメーカーでも、次世代省エネ基準などの省エネ基準のみを指していることがあり、考慮すべき計算要素が足りていない場合があります。
同じ熱負荷計算でも各社によって計算方法や基準が異なります。輻射式冷暖房は、温熱環境設計の精度がより温度ムラや快適性である「住み心地」に直結します。建築物は、一生に一度の買い物になりますので、意匠に加えて「住み心地」からの検討も確認ください。
弊社は、国土交通省の「建築設備設計基準」に加えて、公益社団法人 空気調和・衛生工学会で発表されている高度な計算も加味した熱負荷計算ソフトウェアを独自開発(2020年)し、データベース化を行っています。そのため、より現実に近い温湿度データ、観測値の直散分離による日射データなどを用いることで、より厳密な精度の熱負荷計算を実施しています。
詳しくは「熱負荷計算とは?計算方法や注意点を解説」へ
輻射パネルの配置根拠
輻射式冷暖房の効果を最大限活かすためには、熱負荷計算の実施だけでなく、建築物の方位別による熱の損失の偏りなどまで配慮して輻射パネルの配置を計画すべきです。
輻射パネルの設置台数やサイズの提案が、適切な温熱環境の調査を踏まえているか確認しましょう。
熱負荷計算によって建物の熱の出入りの合計量がわかっても、場所によって熱の出入りに偏りが起こります。(例:夏は南・西側が暑い、など)それらを加味して、輻射パネルの設置位置のバランスを考えることが大切です。
弊社では建築側の視点に立ったコンサルティングも適宜行い、建物から出る熱を抑えられるよう、パネルの設置台数やサイズをご提案しています。
詳しくは「輻射パネルの設置台数やサイズの決め方」へ
室外機の選定根拠
輻射パネル同様、室外機もJIS規格が制定されておらず、大手メーカーであってもカタログ値と実際の性能が異なります。
同じ4000Wの能力でも、能力試験の測定条件が異なり、実際には場合によっては50%近く性能が異なるケースも見受けられます。
また、室外機の能力は地域環境に大きく影響されるため、設置場所の環境を十分に考慮しなければいけませんが、この大事な室外機選びを施工業者に任せているパネルメーカーも一部で散見できます。
室外機の選定は、正確な輻射パネルの能力、導入予定地域の想定気温を元した室外機の能力での選定が必要です。この2軸から選定がなされているかご確認ください。
弊社では室外機メーカーから外気温に応じた性能表を取り寄せ、さらに全国各地の温度域や気象条件と組み合わせたデータを集積しております。
詳しくは「室外機の選び方」へ
施工条件
輻射パネルは、現地で組み立てが必要なメーカーと、組み立て済みの輻射パネルを設置するだけのメーカーに大別されます。
メーカーによっては、現地組み立てで輻射パネル1台につき100個近くのネジ付けが必要なケースもあり、導入台数が多いほど施工期間・費用が膨れ上がってしまいます。
または、施工業者様や職人様が苦労され赤字になるケースも散見されます。
輻射パネルは工事を伴うものです。そのため、工事側にも配慮されている輻射パネルであることが、価格高騰の要因やトラブルの防止になります。
弊社は組立済みの輻射パネルを納品します。組み立て式に比べて大幅な工期短縮・施工費削減が可能です。
保証内容
エアコンとは異なり、輻射パネルには駆動部であるモーターがありませんので、故障の心配は室外機だけに絞られます。
室外機の故障は、メーカー保証範囲内であればお客様の手出しは不要ですが、メーカーの保証期限が1日でも過ぎれば、原因を追究するためだけでも出張費が1万円以上かかったり、交換部品があると数万円程度の出費がお客様に負担になります。
お客様に、急な出費があると困ってしまいますので、できれば室外機は、保証が手厚いことにこしたことはありません。また、自然故障であっても導入から数年後に壊れると、心情的な部分で、お客様と施工会社様と費用負担の話にもなりかねません。
弊社からご購入いただいた室外機を家庭用途であれば10年間保証、業務用途であれば、室外機を8年間保証しております。
まとめ
輻射式冷暖房メーカーを選定する際は、上記に挙げた本質的な条件から比較することが重要です。
本質的な条件を十分にクリアできていれば、導入後のトラブルを未然に防ぐことができ、施主様の健康的で快適な暮らしに貢献することができます。
しかし、輻射式冷暖房はまだ新しい分野のため、統一規格が制定されておらず、Web上にも詳細な情報が掲載されていないのが現状です。
健康的で快適な家づくりを支援できるよう、無料でダウンロードできるチェックリストをご用意しております。
輻射式冷暖房メーカーの比較検討・選定にぜひお役立てください。
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