セントラルヒーティングとは?仕組みやメリット・デメリットを解説

西山 大貴

九州大学工学部卒業。輻射式冷暖房「F-CON」の製品開発や国内外の熱負荷計算業務に従事。

セントラルヒーティングは、北海道などの寒冷地では多くの住宅で採用されていますが、その他の地域ではまだ馴染みのない空調システムです。

本記事ではセントラルヒーティングの仕組みやメリット・デメリットの解説と、セントラルヒーティングと同様の仕組みで冷房も可能な輻射式冷暖房システムについて紹介いたします。

セントラルヒーティング(セントラル空調)とは

セントラルヒーティング

セントラルヒーティングは全館空調システムの一種で、暖房用途の空調システムです。

建物の1カ所に熱源を発生させる装置を設置して、この装置で発生した温水、温風、蒸気などを配管を通して各部屋へ送り、建物の内部全体を暖めます。(床暖房もセントラルヒーティングの1種です。)

※詳しくは「全館空調とは?メリット・デメリットとメーカーの選び方を解説」へ

英語で表記すると「central heating」で、直訳すると中央暖房という意味になります。

セントラルヒーティングの発祥

古来から古代ローマではハイポコースト、ロシアにはアタプレーニエおよびペチカと呼ばれるシステムが存在してますが、近代的なセントラルヒーティングの発祥は欧米です。

20世紀初頭から欧米の都市ではガス、電気、水道などの供給と共に蒸気の供給も行っていました。この蒸気は発電の副産物であり、発電所が供給していました。欧米の寒冷地では町全体で給湯や暖房に取り組んだため、この蒸気を各戸へ分配するシステム、セントラルヒーティングが出来たのです。

日本でも寒冷地域では1975年頃まで石炭や石油を使ったセントラルヒーティングで暖房をしていました。その後、1980年頃からガスや電気温水器を使った暖房が登場し普及していきましたが、2000年頃からセントラルヒーティングを標準装備で売り出すハウスメーカーが増えてきました。

セントラルヒーティング(セントラル空調)の仕組み

セントラルヒーティングの熱源発生装置は、一般的にボイラーまたはヒートポンプが使われています。熱源は電気、ガス、石油と様々で、熱源の交換も可能です。

熱源発生装置で発生させた温水や熱風を、建物内に巡らしている配管を通じて各部屋のラジエーター(放熱器)へ届け、その輻射熱と自然対流により部屋を暖めます。

セントラルヒーティングの仕組み
セントラルヒーティングの装置

熱源発生装置(電気、石油、ガスなど)

電気、石油、ガスによってボイラー、または、ヒートポンプを動かし、熱を作り出します。

ラジエーター(放熱器)

パネルヒーター、パネルラジエーターとも呼ばれます。これらの放熱機器を家の中のあらゆる場所に設置し、熱源発生装置から送られてきた温水、温風をラジエーター内で循環させ、発生する輻射熱で暖房します。

配管

熱源発生装置とラジエータを配管でつなぎ、温水、温風を届けます。

セントラルヒーティングの種類

セントラルヒーティングには「温水式」と「温風式」があり、一般的にセントラルヒーティングといえば「温水式」のことを指します。

温水式

熱源で温めた温水を建物内部の配管を通して各部屋のラジエーターへ届けることで部屋を暖める仕組みです。大きな建物にも対応できて、熱損失が少ないことが特徴です。

一方で配管には高い気密性が求められるため、温風式よりも初期費用が高くなる傾向があります。

温風式

大型のファンヒーターのようなもので発生させた温風を配管を通して各部屋のラジエーターに届けることで部屋を暖める仕組みです。

配管は温水式に比べて気密性が高くなくてもよいというメリットがありますが、温風は温水に比べて熱損失が大きく、広い空間をまんべんなく暖めることが難しいため、小規模な建物でしか使えません。

そのため、現在では温風式を導入する建物は少数派となっています。

セントラルヒーティングのメリット

家全体が暖かく、温度ムラがない

セントラルヒーティングは、各部屋はもちろん、配管が通っている廊下や階段など家全体を暖めることができます。

そのため、建物全体がほぼ均一の温度になり、建物内での温度ムラが生まれにくくなります。

 建物全体を暖めてくれるセントラルヒーティングならば、窓際にラジエーターを設置することで、コールドドラフト現象を防止できます。

コールドドラフト現象とは

室内の暖かい空気が窓で冷やされ冷気となり、床に降りてくる現象です。冷気流(コールドドラフト)によって床付近の足元に冷たい空気層ができ、天井付近の暖まった空気と5℃以上の温度差になると言われています。

ヒートショックなどの予防効果

セントラルヒーティングは建物内で急激な温度変化が生じないため、ヒートショックの予防効果も期待でき、高齢者や心臓、脳などに持病がある人に最適な暖房です。

音が静か

セントラルヒーティングは輻射熱による暖房で風がないため、エアコンと違って風切り音がせず、音がうるさくて眠れないといった悩みを解消できます。

風がなく、空気が乾燥しない

セントラルヒーティングは無風のため、温風が直撃してボーっとしたり、顔が火照ったりすることがなくなります。

また、温風がずっと出続けることが原因の室内乾燥を軽減、乾燥による肌トラブルや喉の痛みも生じにくくなります。

ホコリやウイルスを巻き上げない

無風のため、室内のホコリやウイルス、アレルギーの原因となるハウスダストを空気中に巻き上げることがないため、アレルギー対策としても有効であるだけでなく、日々の掃除の手間を軽減できます。

火傷や火災の心配がない

セントラルヒーティングは火を使わないため、火災や火傷のリスクがなく、子供、高齢者、ペットがいる環境でも安心、安全に過ごすことができます。

二酸化炭素が発生しない

セントラルヒーティングは室内で石油やガスを使用しないため、不完全燃焼、一酸化炭素中毒などの事故リスクがなくなり安全です。

ニオイがない

セントラルヒーティングは石油を使用しないため、石油ストーブのように燃焼時の気化したガスのニオイや焦げ臭いニオイがしません。

日々のメンテナンスがお手軽

セントラルヒーティングの日々のメンテナンスは、ラジエーターにたまったホコリの拭き掃除程度です。

エアコンのようにフィルターが無いので、掃除やメンテナンスの手間が省けます。

耐久性が高い

セントラルヒーティングは他の暖房器具に比べて耐久性が高く、長く使えることも大きなメリットです。熱源装置とラジエーターに分かれているため、故障した箇所だけ修理交換することができます。

しかし熱源装置がボイラーの場合、1年に1回程度、専門業者によるメンテナンスを行う必要があります。長期間ボイラーを使っている場合は、メーカーによる修理部品の供給が終了していることもあり、その場合は交換が必要です。

また、温水式の場合は不凍液の交換も必要です。セントラルヒーティングの劣化の主な原因は「不凍液」の劣化による内部からの錆付きであることが多いため、3~5年に1回の不凍液交換を推奨しています。

セントラルヒーティングのデメリット

導入費用(設置費用)が高い

セントラルヒーティングは、エアコンやストーブなどのように買ってきて設置(取り付ける)すれば使用できるものではありません。

熱源装置やラジエーターの設置、熱源装置と各部屋に設置したラジエーターをつなぐ配管工事など大掛かりな工事が必要となることから、費用と工期を要します。

POINT

導入費用の高さだけに注目せず、生涯コスト(導入費用+ランニングコスト+維持費の合算)でで総合的に判断しましょう。

たとえ導入費用が安くとも、ランニングコストが高かったり、耐久性が低く維持費(クリーニング・修理・交換など)がかさむのであれば本末転倒といえます。

ランニングコストが高い

セントラルヒーティングに限らず、頻繁に電源オン/オフを繰り返すとエネルギー消費量が高くなります。

特に温水式のセントラルヒーティングの場合、冷水を温める際に大きなエネルギーを消費するため暖房費が高くなりがちです。

そのため、冬の間は24時間運転が基本となります。数日間家を不在にする場合も低温設定にして稼働させ続けた方がお得です。

また、セントラルヒーティングは空気を暖めるのではなく建物全体を暖めるため、外気温が下がりきる前の「今日はちょっと寒いかな…」と感じるくらいから使い始めた方が省エネで、シーズントータルの光熱費は節約できます。

POINT

セントラルヒーティングの特徴をよく知り、賢く使うことでランニングコストを抑えることができます。

また、セントラルヒーティングは高気密、高断熱の住宅と相性がよいとされており、住宅の断熱性能、窓ガラスの性能を上げることが消費電力抑制にもつながります。

電源を入れてから暖まるまでに時間がかかる

セントラルヒーティングは温水を循環させて、輻射熱でじわじわと室内や建物全体を暖める仕組みです。

そのため、電源をオンにしてすぐに温風が出てくるエアコンのような速暖効果はありません。

POINT

基本24時間運転のため、たとえ低温運転であっても室内が完全に冷え切ることはなく、速暖性はあまり重要ではないかも知れません。

セントラルヒーティングには冷房機能がない

セントラルヒーティングは暖房機能のみで、冷房機能が必要な場合は別途エアコンなどの冷房設備を導入する必要があります。

北海道のエアコンの普及率は未だ低いとされていますが、近年は北海道でも35℃以上の猛暑日が10日以上続くこともあり、すでに我慢の域を超えています。

POINT

日本の夏の平均気温は年々上昇傾向にあり、夏場の冷房設備は欠かせないものです。熱中症予防のためにも冷房設備の導入を強くおすすめします。

日本でセントラルヒーティングが普及しない理由

海外の暖房はセントラルヒーティングが主流ですが、日本では北海道などの一部の寒冷地で導入されている程度で、普及率が高いとはいえません。

以下に考えられる理由を挙げます。

  • 日本の気候は高温多湿のため、昔からいかに湿度を下げて夏を快適に生活するかが住居を建てる上での最重要課題であった
  • 冬場は局所暖房(人がいる所だけ暖める)が当たり前で、全館暖房(建物全体を暖める)という発想そのものがなかった
  • 冬が寒いのは当然、「我慢は美徳」、「暖房はもったいない」という意識が高かった
  • セントラルヒーティングは高気密、高断熱の住宅ほど効率的に暖房ができて相性がよいが、日本では断熱性能が家を建てる上で重要視されておらず、日本の住居の断熱性能は先進国の中で最低レベル
引用元:野村総合研究所「海外における省エネ規制・基準の動向
  • 欧米では居住環境は人権問題という意識が高く、家主に改修を命じることもある。また、健康への配慮から住宅の最低室温を規制する国が多い。日本では店舗や事務所などの最低室温に関する法規制はあるものの、住宅は対象外

変わりつつある日本の住宅

断熱性能の義務化「建築物省エネ法」改正法が成立

他国と比べても規制が緩かった国内の建物の断熱性能を義務化し、木材利用を促進する建築物省エネ法の改正法が2022年6月に成立しました。

すべての新築住宅・非住宅に省エネ基準「断熱等級4」の適合を義務付け、2025年以降はこれを下回る建物は新たに建てられなくなります。

「断熱等級4」とは、壁や天井だけでなく、開口部も断熱を行うことが必要とされます。

画像引用元:日経クロステック「戸建ては断熱等級「7」まで新設ZEH上回る性能を評価

現状の新築物件は8割がこの基準をすでに超えているのに対し、既存の建物では12~13%に留まり、等級4の基準を満たしていない8割以上の既存の建物の断熱改修も急がれます。

日本では元々、家庭のエネルギー消費量が欧米に比べて少ないことや、対策のための費用加算で住宅販売が落ち込むことなどへの懸念もあり、国は建築物の省エネ化に積極的ではありませんでした。

しかし、建築物分野は、全エネルギー消費の約3割を占めており、この分野が省エネを意識することで、下記のように、より高い省エネ効果と、人にも環境にも優しい暮らしの実現が期待されます。

  • 冷暖房のためのエネルギー使用量を抑制
    • 住宅の断熱性能UPにより、セントラルヒーティングの暖房効果もUPし、ランニングコスト削減につながる
  • 室内での寒暖差が緩和され、ヒートショックなどの健康被害も減らす
  • 木材利用により、建築時の二酸化炭素排出を減らす

セントラルヒーティングは暖房しかできない

国の省エネ対策により住宅性能が向上することで、セントラルヒーティングのデメリットが一部解消され、今後ますます導入が進むかもしれません。

しかし、「セントラルヒーティングは暖房しかできない」という問題は残ります。

先述した通り、日本の夏の平均気温は上昇し続けており、夏は涼しいイメージの北海道でも35℃以上の猛暑日が10日以上続いています。令和3年5~9月の北海道の熱中症による救急搬送者数は1,924人で、昨年の同時期(1,088人)と比較すると約1.8倍です。

また、全国の熱中症発生場所の1位は「住居」39.4%となっています。

で冷房の無い室内は、たとえ扇風機を回して窓を開けていたとしても、窓(開口部)から熱が室内に入り込んでしまい、かえって熱中症の危険が増大します。

冷房も可能な全館空調システム「 F-CON」

セントラルヒーティングの仕組みやメリットはそのまま、暖房だけでなく冷房もできる空調設備、それが輻射式冷暖房「F-CON」です。

輻射式冷暖房とは

輻射式冷暖房は主に温度と輻射熱(放射熱)をコントロールし、室内の温熱環境の快適性を総合的に高めるシステムです。

仕組みは温水式セントラルヒーティングと同様に暖房時には温水を、冷房時には冷水を室外機(熱源機)で作り、室内の輻射パネルに循環させることで、空間全体の温熱環境を安定的に保ちます。

温度ムラや送風による身体的ストレスから人々を解放する、快適性に優れた輻射式冷暖房は、日本でも徐々に導入が進んでいる注目の設備です。

詳しくは「輻射式冷暖房とは?エアコンとの違いやメリット・デメリットを解説」へ

POINT

輻射式冷暖房はセントラルヒーティングのメリットはそのまま、冷房も暖房も両方できるのが最大のメリットです。

無風の輻射式冷暖房システム「F-CON」

輻射式冷暖房は有風タイプと無風タイプに大別され、F-CONは無風タイプです。

下記のセントラルヒーティングのメリットに加えて、冷房機能を擁するのが最大の特徴です。

  • 家全体が暖かく、温度ムラがない
  • ヒートショックなどの予防効果
  • 音が静か
  • 風がなく、空気が乾燥しない
  • ホコリやウイルスを巻き上げない
  • 火傷や火災の心配がない
  • 二酸化炭素が発生しない
  • ニオイがない
  • 日々のメンテナンスがお手軽
  • 耐久性が高い

F-CONの輻射パネルの保証期間は1年ですが、50年以上の耐久性を部品メーカーにて立証済で、過去経年劣化による交換歴はありません。

室外機は住宅用であれば10年まで延長保証し、その間の保証対象の修理はすべて無料で行っております。

最適な輻射式冷暖房メーカー選定のために

輻射式冷暖房は、その快適性・健康性で注目を集めている次世代型の空調ですが、新しいがゆえに製品設計や施工のルールが曖昧で、導入トラブルが誘発されやすいのが現状です。

何よりも輻射パネルは性能測定においてJIS規格が定められておらず、実測値ではなく推測値で性能提示するなど数値的根拠が乏しい輻射パネルメーカーが多く見受けられます。

輻射式冷暖房は建物の状況に合わせて最適な温熱環境設計・施工する必要があり、見た目の特徴やブランドイメージといった表層的な条件ではなく、高い専門性や提案力など本質的な条件でしっかりメーカー比較することを強くおすすめいたします。

詳しくは「最適な輻射式冷暖房メーカーを選定するための本質的な比較条件」へ

FUTAEDAは下記の通り、数値的根拠はもちろん第三者的視点での「快適性」検証を重ね、製品の性能向上のために日々、取り組んでおります。

  • 輻射式冷暖房の特許を取得
  • 自社で研究施設を保有
  • 自社開発した輻射式冷暖房F-CONを全室導入したホテル「HOTEL GREAT MORNING(福岡市博多区)」を運営 → 宿泊したお客様から高い評価を獲得
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FUTAEDAでは皆さまの健康的で快適な家づくりを支援できるよう、無料でダウンロードできるチェックリストをご用意しております。

輻射式冷暖房メーカーの比較検討・選定にぜひお役立てください。

無風の輻射式冷暖房システム「F-CON」

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