ドイツを筆頭としたヨーロッパでは、主に暖房として古くから親しまれている輻射式空調ですが、昨今、湿度の高くない地域における冷房用途の普及も世界的に進んできました。
そうしたなか、暖房も冷房も必要で、なおかつ多湿である日本は、技術的な課題に加え、これまで温熱環境の設計を軽視してきたことも相俟って、その普及に遅れをとっています。
快適性や省エネ性の見地から輻射式冷暖房への注目度も徐々に増してきたとはいえ、まだ国内の統一規格が策定されておらず、定義も曖昧で、導入を検討する際に正しく比較することが困難な状況と言えるでしょう。
このページでは、そんな輻射式冷暖房の価格や性能を比較するためのポイントについて解説します。
目次
輻射式冷暖房の導入費用
輻射式冷暖房の導入費用は、輻射パネルの本体価格ではなく、システム一式であることがほとんどです。
目安としては1坪あたり10〜13万円(最低でも100万円以上)。全館空調とほぼ同価格帯になります。
ただし、ひと括りで輻射式冷暖房と言っても、単独型とエアコン接続型/応用型とでは見積の算出方法や設置に要する工程が異なります。
そのため、一律に比較できず、見積書の金額だけで判断すると、想定外のトラブルに見舞われかねません。
見積時のチェックポイント
- 熱負荷計算の有無と内容
- エアコンの接続が必要か否か
- 輻射パネルの性能評価
- 耐久性と保証サービス
見積時に重要となるチェックポイントは上記の4つです。これより先は1つ1つの項目について紹介していきましょう。
熱負荷計算
輻射式冷暖房の見積においては、提出の早さや金額の安さが一概に良いとも限りません。
なぜなら、輻射式冷暖房は製品の納入や設置だけでなく、適切な温熱環境の設計が不可欠で、それに伴う事前の熱負荷計算を要するからです。
熱負荷計算とは建物から出入りする熱の計算のこと。とても煩雑な工程で、時間はもちろん、専門業者に外部委託すると費用も10万円ほどプラスでかかります。
詳しくは「輻射式熱負荷計算とは?計算方法や注意点を解説」へ
熱負荷計算の有無
まずは熱負荷計算が見積の段階で行われているかどうかを確認しましょう。
単独式の輻射式冷暖房は建物の熱の出入りなどをオーダーメイドで計算し、輻射パネルを配置しなければ、最大限まで効果を引き出せません。
言い換えると、とりわけ単独式の正確な見積額は、熱負荷計算なくして決まらないということです。
熱負荷計算の内容を確認
熱負荷計算がされていた場合であっても、計算方法が正しくなければ意味をなしません。輻射式空調のメリットを享受したくて設備を導入しても、冷暖房能力が足らずにエアコンを買い足す結果になるようでは本末転倒です。
UA値やηAC値といった断熱性能の基準値のみで温熱環境の設計を行う業者もいますが、これだけでは判断材料が不足し、熱負荷計算を行ったことにはなりません。
正しく熱負荷計算するには、断熱の種類や厚み、窓の方角・種類・サイズ、建物の用途や使用人数など、多数の要素を加味する必要があります。
同じ都道府県内でも山間部と平野部では暑さや寒さが違います。つまり建築物そのものの条件のみならず、立地によっても熱負荷計算の結果は異なり、それが見積額にも反映されていきます。
詳しくは「輻射式冷暖房の導入に必要な3STEP」へ
エアコンの接続が必要か否か
輻射式冷暖房の導入にあたって、無風であることを必須要件とするのであれば、エアコンを接続する必要があるかどうかも必ず確認しましょう。
輻射式冷暖房は、輻射式冷暖房を単独で導入するタイプと、エアコンを接続するタイプに大別されます。
詳しくは「輻射式冷暖房とは?エアコンとの違いやメリット・デメリットを解説」へ
エアコンを接続するタイプは、エアコンと同じく畳数の目安からすぐに概算見積を出すことが可能です。単独型に比べて緻密な温熱環境の設計を必要とせず、安価に導入できます。
エアコン接続型や応用型の留意点
エアコン接続型や応用型の輻射式冷暖房は、エアコンの送風を活かすことが前提となります。輻射式冷暖房と言えば無風のイメージが一部で定着しつつありますが、すべての輻射式が無風なわけではありません。
また、エアコン接続型や応用型は、単独型と比較して簡便な熱負荷計算しか行われないケースが多いため、輻射式冷暖房の導入後に既存のエアコンを撤去してしまうと、暑さ寒さによるトラブルも起こり得ます。
しかし、エアコンの接続/応用を念頭に導入する際や、輻射式冷暖房を一部の部屋に導入する際も、適切な熱負荷計算を行うことで、そうした問題発生のリスクは低減されます。
輻射パネルの性能評価
輻射パネルの性能を正しく評価するために、能力数値を確認しましょう。緻密な熱負荷計算を行っても、設置する輻射パネルの性能が不適切だと、期待した冷暖房効果は得られません。
能力数値とは、冷房時に12℃の冷水を流す輻射式パネルであれば、夏場を想定した室内環境でその冷水が流れる際に冷房能力が何ワット出ているか、といったことを表す数値のことです。
冷水の温度だけでなく、厳密には水量など他の要素も絡んできますが、こうした数値がエビデンスに基づいたものなのかも注視する必要があります。
詳しくは「輻射パネルの性能を正しく評価するために」へ
性能評価に関する課題
輻射式冷暖房にはJIS規格のような統一規格がありません。各メーカーが独自の規定でカタログや仕様書に性能を表示しており、それが推定値や仮定値だった場合、実環境で測定すると大きくずれることもよく起こります。
このような実態が導入後のトラブルを招かないとも言い切れず、また、輻射式冷暖房への不信につながる点も懸念されています。
輻射パネルの耐久性と保証
輻射式冷暖房はエアコンと比べて初期費用が高く、その半分以上は輻射パネルに充てられています。
室外機はエアコンと同じヒートポンプ式で、買い換えることを想定している一方、室内機の輻射パネルは長期利用が可能です。したがって、輻射パネル本体はライフサイクルコストを見据えるといいでしょう。
輻射パネルの耐久性
ライフサイクルコストの観点からも、SDGsの観点からも、輻射パネルが長期利用に耐え得る素材や構造になっているかを確認しましょう。
弊社では耐久性と機能性の向上を考慮し、流水部にステンレスを、放熱部にアルミを採用しています。
輻射パネルの保証自体は他のメーカーと同等ながら、流水部をステンレス配管にすることで、製品の期待寿命が約50年以上となっています。
製品の保証サービス
ランニングコストを抑える意味も含めて、各メーカーが提供している保証サービスの内容を確認しましょう。
例えば室外機が故障すると、修理や買い替えに数万円以上かかることも珍しくありません。その対策として、室外機に一定期間の保証がついたメーカーを選択するのも1つの手と言えます。
まとめ
輻射式冷暖房の見積時にチェックすべきポイントを駆け足で見ていきましたが、実際はある程度の知識を備えていないと、なかなか判断しにくいかもしれません。
そこでFUTAEDA株式会社では、輻射式冷暖房の導入を検討されている企業様へ無料で温熱環境コンサルティングを承っています。
- 輻射式冷暖房を有効活用できるかわからない
- どの輻射式冷暖房メーカーにすべきか判断できない
- 事前の温熱環境設計に関する知見がない
自社の研究施設を持ち、科学的根拠に基づいて開発を続けてきた弊社が、皆様のより良い空間づくりをサポートさせていただきます。
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