快適なオフィス環境を実現するために、室温や湿度をコントロールする空調設備の役割は重大です。
しかし、従来のエアコンやセントラル空調といった設備では、温度ムラの解消や、風が直接当たることによる弊害などを解決することができず、全員が快適と感じるオフィス環境へ整備することは難しいです。
本記事では、空調設備が関わるオフィス環境の課題や対策、温度ムラや送風リスクを解消する輻射式冷暖房システムについて解説いたします。
目次
快適なオフィス環境とは?
オフィスの安全衛生について
経営者は従業員の安全と健康を守るために、労働安全衛生法の定めを守る義務があります。
労働安全衛生法では「職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする」(第1条抜粋)と定められています。
快適職場指針のポイント
不快と感じることがないよう、空気の汚れ、臭気、温度、湿度等の作業環境を適切に維持管理すること。
空気環境
空気の汚れ、臭気、浮遊粉じん、タバコの煙温熱条件
温度、湿度、感覚温度、冷暖房条件(外気温との差、仕事にあった温度、室内の温度差、気流の状態)視環境
明るさ、採光方法、照明方法、(直接照明、間接照明、全体照明、局所照明)、グレア、ちらつき、色彩音環境
騒音レベルの高い音、音色の不快な音作業空間等
引用:中災防:快適職場指針のポイント
部屋の広さ、動き回る空間(通路等)、レイアウト、整理・整頓
POINT
安全衛生管理というと工場や医療施設などの限定的なイメージがありますが、一般的なオフィスも対象です。
従業員は生活のおよそ3分の1を職場で過ごすことから、安全かつ健康に仕事に従事できるよう、経営者は衛生管理義務があるのです。
最適なオフィスの温度・湿度
空調設備は、オフィス環境で重視されている「温度」と「湿度」の2つに大きな影響を及ぼします。
「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」や「事務所衛生基準規則」によると、適切な室内温度は18℃~28℃、湿度は40%~70%と定められています。
適切なオフィス内の温度 | 18℃~28℃ |
適切なオフィス内の湿度 | 40%~70% |
(1) 18℃以上28℃以下
建築物環境衛生管理基準について|厚生労働省
(2) 居室における温度を外気の温度より低くする場合は、その差を著しくしないこと。
事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が十八度以上二十八度以下及び相対湿度が四十パーセント以上七十パーセント以下になるように努めなければならない。
事務所衛生基準規則 | e-Gov法令検索
POINT
上記の温度も湿度も、あくまでも目安です。特に温度に関しては、エアコンの設定温度とイコールではないことに注意が必要です。
オフィスの環境改善がもたらす効果
オフィス環境を整備することは経営者の義務で、ここまではその重要性と対策について述べてきましたが、快適性がUPすることで、会社にとって様々メリットも生まれます。
仕事の成果や仕事に対するモチベーション向上
一般社団法人 日本オフィス家具協会の調査によると、オフィス環境に対する満足度を向上することは、仕事に対するモチベーションを高め、仕事の成果向上に結びつけることに寄与できるものと考えられるとされています。
オフィス環境に対する期待
また同調査において、オフィス環境では「適切な空調管理が行われていること」を重要視するオフィスワーカーが最も多い結果となっています。
オフィスの安全性や快適性に関する重要度・実現度
POINT
オフィス環境において「適切な空調管理が行われていること」が重要視されている反面、実現度と重要度の差が大きくもある(空調設備に改善余地がある)ことがわかります。
生産性の向上
米国の連邦政府管財局の調査によると、空気調和をしている部屋としていない部屋での作業効率を比較したところ、空気調和している部屋の方が作業効率が良い結果となりました。
生産性 | 9.5%向上 |
作業ミス | 0.5%低減 |
欠勤率 | 2.5%低減 |
オフィスの空気環境改善の事例
近年で話題になったのは、2019年の兵庫県姫路市の取組みです。
夏場の市庁舎内の室温を、環境省が「クールビズ」として呼び掛ける28度よりも低い25度に設定する全国初の実証実験を行い、その結果を発表しました。
光熱費 | 約7万円増 |
残業代 | 約4,000万円減 ※豪雨や台風への対応が昨年より少なかったことも |
月の残業時間 | 21.6時間→18.7時間に減少=約3時間(14%)減 |
職員の業務効率体感 | 85%が「向上した」と回答 |
職員の疲労感 | 83%が「軽減した」と回答 |
上表の通り、光熱費は約7万円増となったものの、職員の業務効率が上がることで残業代削減につながり、職員はもちろん姫路市民にとってもプラスの効果をもたらす結果となりました。
オフィスが抱えている空調問題
前章では「適切な空調管理が行われていること」が重要視されている反面、実現度と重要度の差が大きくもある(空調設備に改善余地がある)ことがわかりました。
本章では、空調設備が要因として関わるオフィスの空調問題について解説いたします。
クールビズに対する誤解
環境省はクールビズとして室内温度は28℃(目安)を推奨し広く認知されていますが、大きな誤解も生じています。
それは、「室内温度 ≠ 冷房の設定温度」であることです。エアコンで28℃に設定したからといって、室内温度が28℃になるとは限らないのです。
特に、40代~50代の男性が「室温」と「設定温度」を勘違いしている割合が高く、この年代で7割弱の人が勘違いをしてしまっているこの状況では、「クールビズは暑い!」と思ってしまうのもうなずけます。
引用:「クールビズ28℃」の真実 多くの人が「○○の○○○○」と思っていた!? |COOLBIZ|COOL CHOICE 未来のために、いま選ぼう。
一般的な組織では管理職等にあたる世代が誤解していると、オフィスの冷房設定が28℃にすべきと間違ったルール化で運用されてしまい、生産性・モチベーションの低下や、エアーハラスメントにつながってしまいます。
POINT
室内温度28℃は、あくまでも目安です。
冷房時の外気温や湿度、建物の状況、体調等を総合的に考慮しながら、無理のない範囲で冷やし過ぎない室温管理が重要となります。
省エネと快適性
昨今ではSDGsの取組みとして最適な室温設定が挙げられていますが、省エネばかりに目を向けた結果、オフィス内の快適性が損なわれ、従業員がストレスを感じ、業務効率や生産性が下がるようでは本末転倒でしょう。
しかし、一概にオフィスといっても建物の条件や業態によって様々であることから、快適性を確保するためには、オフィスごとに温度ムラなどの状況を把握し、最適な空調設備を選択する必要があります。
最適な温熱環境を実現できれば、空調の設定温度を緩和することができ、結果省エネにつながります。(1℃緩和すると省エネ量は約10%※)
※出典:ビルの省エネチューニング / 一般財団法人 省エネルギーセンター
POINT
オフィスの空調設備に求められるのは、もはや省エネ性は当たり前であり、さらに従業員の快適な作業環境の確保が重要となります。
オフィス内の温度ムラ
住居同様、オフィス内の温度を均一に保つことは難しく、下図のように同フロア内でも温度ムラが生じてしまいます。
エアコン使用時のオフィス室温の測定結果例
温度ムラの原因と対策
冷温風が届く、届かない
エアコンの吹き出し口の近くでは冷温風が直撃する一方で、風が届かない場所もあり、温度ムラにつながることがあります。
対策として、エアコンの風よけ装置の設置や、吹き出し方向を調整して風を拡散させることが挙げられます。
機器からの排熱
コピー機やパソコン、サーバーといった機材からの排熱で、熱源近くだけ温度が高くなることで、温度ムラにつながることがあります。
対策として、熱源となる機器の周りにパーテーションを設ける、コピー室やサーバールームなど別室を設けて空調設備を整えることが挙げられます。
人の密度
室内の人の密度のムラも、温度ムラに繋がります。
対策として、密閉・密集・密接の3密を避け、社会的距離の取れる座席の配置を設計しましょう。
なお、快適なオフィス面積は一人あたり3坪ほど(約6畳)の大きさが必要とされています。
壁一面ガラス張り
ガラス窓に遮熱や断熱加工がされていないと、日射によって室温が上昇したり、逆にコールドドラフト現象によって足元が冷えたりします。
対策として、オフィスの機能や用途に適した窓ガラスの採用や、ブラインドカーテンやロールスクリーンの設置が挙げられます。
快適なオフィス環境にふさわしい空調設備とは
オフィスの空調設備の種類
オフィスの空調設備は、セントラル空調と個別空調に大別されます。
セントラル空調は設計自由度が高く、大規模施設の空調設備として古くから実績がありましたが、近年ではビル用マルチエアコンなどの個別空調の技術開発が進み、個別空調を採用するオフィスが増えています。
また、セントラル空調と個別空調の協調制御技術も開発されており、それぞれの課題を補いながら快適性を高めるシステムも提案されています。
詳しくは「セントラルヒーティングとは?仕組みやメリット・デメリットを解説」へ
セントラル空調のメリット・デメリット
セントラル空調は、熱源を一箇所にまとめて、空調を空気調和機へ分散させる仕組みです。空調の制御は中央管理室などでまとめて行います。
メリット |
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デメリット |
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※可変風量方式(VAV=Variable Air Volume)であれば、室内の温度差を感知するセンサーにより、風量の調節を自動的にしてくれる仕組みのため個別制御が可能です。
個別空調のメリット・デメリット
個別空調は、一般住宅のエアコン同様、各部屋各フロアで個別に温度調整が可能な仕組みです。
メリット |
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デメリット |
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無風・無音の輻射式冷暖房システム「F-CON」
輻射式冷暖房のF-CONは、送風(気流)ではなく輻射の原理で空間全体を空調する新しい全館空調システムです。
快適な温熱環境設計
輻射式冷暖房は、エアコンのように購入して設置するだけではなく、導入前に温熱環境の設計が必要となります。
弊社では、地域の気象条件や建物の条件はもちろん、オフィス内の人数、プリンターやパソコンといった機器の発熱量まで細かく把握し、しっかり根拠に基づいた高度な温熱環境設計を行いますので、まさにオーダーメイド空調と言えます。
詳しくは「熱負荷計算とは?計算方法や注意点を解説」へ
高度に温熱環境を設計することは、従来の空調問題の主要因である温熱ムラを解消することにつながります。
清潔な空気環境
無風のF-CONはエアコンのように送風を必要としないため、風によって室内のホコリを巻き上げたりウイルスを拡散せず、衛生的です。※換気は必要です。
従業員満足度
乾燥やカビ臭いといった送風によるストレスが軽減されるだけでなく、無風+無音による集中力UP・リラックス性が脳科学的に立証※されています。
参考:世界初・無風の快適さを脳科学視点で定量評価/九州大学基幹教育院
省エネ対策
輻射熱による空調は、送風による空調に比べて体感温度が1~2℃改善されるので設定温度を緩和できます。
運用・メンテナンスコスト
F-CONにはエアコンのようなフィルターやファンといった故障しやすい部分が無いので、専門業者による清掃・交換コストが削減できます。
オフィスへのF-CON導入実績
輻射式冷暖房F-CONの導入による快適性は高く評価され、多くの企業で採用されています。
島津製作所様の事例
島津製作所様は、先端分析、脳五感・革新バイオ、AI(人工知能)などの研究開発を推進し、オープンイノベーションによる新しい価値の創造と社会課題の解決を目指すため、けいはんなに新研究棟「SHIMADZUみらい共創ラボ」を設置しました(2020年10月)。
同施設において、研究者や技術者の執務室(1,500㎡)とジムメッセ(300㎡)に輻射式冷暖房F-CONを導入いただいております。
※詳しくは「オフィス | 輻射式冷暖房の導入実績 」へ
研究者や技術者の方々が多くの時間を過ごす空間にF-CONが採用されたことは当社にとって大きな誇りであり、ここから新たな価値が創り出され、世の中に発信されることを願ってやみません。
無料の温熱環境コンサルティング
当社では、オフィスの空調設備として輻射式冷暖房を導入検討されている企業様へ、無料で温熱環境コンサルティングを承っております。
- 熱負荷計算など、事前の温熱環境設計に関する知見が無い
- 輻射式冷暖房を検討したいが、有効活用できるかわからない
- 輻射式冷暖房を導入したいが、どのメーカーにすべきか判断できない
上記のような課題やお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。
自社研究施設を持ち、数値的根拠を重視して研究開発に臨む当社ならではの知見で、より良い空間づくりをサポートいたします。
無風の輻射式冷暖房システム「F-CON」
法人様向け「F-CON体感」説明会
弊社モデルルーム(東京・京都・福岡)にて、輻射式冷暖房「F-CON」がもたらす健康的で快適な空間を「体感」していただける機会をご用意しております。