輻射式冷暖房について検索してみると、下記のようなネガティブな口コミや評判を目にします。総じて、導入前の心配からのコメントと実際に使用後のコメントに分けることができます。
導入前の不安点
- イニシャルコストの高さ
- 輻射パネルの結露
- 冷暖房効果の信憑性
- 設置スペースの大きさ
- 設置時間の長さ
使用中の不満点
- 電気代の高さ
- 効き目の悪さ
このページでは、こうした意見が出てしまう背景と、それぞれの予防策や解決策について紹介します。
目次
導入前によくある不安
イニシャルコストについて
輻射式冷暖房のイニシャルコストがエアコンに比べて高額な事実は否めません。参考までに、相場は1坪あたり10〜13万円(最低でも100万円以上)とされています。
輻射式冷暖房は建築付帯設備 である点に加え、輻射パネル1台あたりの能力がメーカーごとに異なり、必要な台数も変わります。
詳しくは「輻射式冷暖房の価格や導入費用を正しく評価するために」へ
したがって、輻射式冷暖房の導入費用はパネルの単価ではなく、建物とセットで考え、生涯コストで見ていくことが大切です。
<生涯コスト>= イニシャルコスト + ランニングコスト
家づくりにおいては、建築費用や販売価格、すなわちイニシャルコストを下げることよりも、光熱費も含めた生涯コストを下げようとする傾向が徐々に高まっています。
輻射式冷暖房もこれと同様で、導入費用は高いものの、生涯コストで試算すると、エアコンよりも飛び抜けて高額であるとは言い切れません。
輻射パネルの結露について
冷房時の輻射式冷暖房は、流水部から流れる冷温水によって、どうしてもパネルの表面が結露します(暖房用途のみのパネルヒーターやセントラルヒーティングは結露しません)。
設置方式ごとの結露対策
輻射パネルの結露対策を設置方式別に見ていきましょう。
輻射式冷暖房の設置方式は、天井式・壁式・自立式 が主流です。
まず、天井式は冷房温度を制御することで、天井から結露水が落ちてこないようにします。
対する自立式と壁式には、輻射パネルから出た結露水を受け止める部材が装備。受け皿のようなこの部材から結露水を外に排出するため、床が水浸しになるようなことはありません。
ユーザー側が日頃 行う作業は布巾などで拭き取るという、簡単なお手入れのみです。ただし、排水部分にホコリが溜まると結露水が溢れてしまうので、季節の変わり目などには別途ホコリを取り除く必要があります。
その他の結露トラブル
頻繁にドアが開閉するコンビニを一例に、室内外の空気が激しく入れ替わる場所では、パネル以外の配管なども結露するリスクが高まります。
このような空間や、そもそも湿度が高い建物には、輻射式冷暖房よりもエアコンのほうが適しています。
詳しくは「輻射式冷暖房の適正を判断するための建物の条件」へ
弊社が開発している輻射式冷暖房「F-CON」では、配管を結露から守るためにJIS規格以上の厚みがある保温材を採用し、結露によるトラブルが起こらないように配慮をしています。
冷暖房効果の信憑性について
輻射式冷暖房は、まだ普及率や認知度が低く、誰もが体感している設備ではありません。
「本当に暖まるのか、冷えるのか」と、効果を心配する声が上がって然るべきかと思います。
そこで、弊社では原理などをご理解いただくのと並行して、最寄りのモデルルームで輻射式冷暖房の良さを体感していただく取り組みに力を入れています。
輻射式冷暖房の効果を引き出すために
輻射式冷暖房は、家電量販店で購入できるような量産型の冷暖房機器ではありません。
気象条件、方位や間取り、窓や断熱材の種類などをトータルで捉え、温熱環境を設計しながら建物に合わせてカスタマイズしていく設備です。
- 間違いない製品
- 間違いない設計
- 間違いない施工
この3点が揃えば、冷暖房効果を最大限まで引き出すことができます。
詳しくは「輻射式冷暖房の導入に必要な3STEP」へ
各メーカーには商品開発力だけでなく、温熱環境の設計力や建物に適した設備の選定力をはじめ、より高度なスキルが求められます。
しかし、科学的根拠に裏付けられた十分な知見を備えていない会社も少なからず存在するため、メーカー選びは慎重に行わなければいけません。
疑問に思う点があれば、メーカー担当者に遠慮なく 質問していくことも大切です。
設置スペースについて
壁式や自立式の輻射パネルはエアコンと比較すると場所を取り、それが導入のネックになることもしばしばあります。
この点については、輻射式冷暖房の導入計画を建築設計の段階から組み込んでいく方法が最善策と言えます。
輻射パネルの種類
輻射パネルは、設置の仕方次第で部屋の印象が大きく変わります。
さらに言うと、建築設計の段階であれば、いくらでも空間に馴染ませることが可能です。
詳しくは「輻射式冷暖房とは?エアコンとの違いやメリット・デメリットを解説」へ
そのまま床材となる天井式や、文字通り床に埋め込む床下式は比較的イメージしやすいかと思いますが、 自立式 も部屋の間仕切り(パーテーション)代わりに活用すればインテリアの一部として溶け込み、壁式 も間取りにさほど影響なく配置できます。
和洋問わずさまざまなテイストにマッチする輻射式冷暖房は、住宅はもとより、オフィスやホテル、商業施設、病院などにも続々と採用されています。
詳しくは「無風の全館空調である『F-CON/輻射式冷暖房』の導入実績」へ
建築設計の初期段階から輻射式冷暖房の導入計画を進めていくメリットは、パネルの配置を考慮した間取りが組め、それを室内空間と一体化させられる点にあります。
すでに間取りが決まっていても導入は可能ですが、パネルの種類やサイズの選定などで自由度は下がり、結果として「設置スペースの確保に苦労する」といった声につながっている現状も否定できません。
設置時間について
建築付帯設備であり、建築とセットで考えていく輻射式冷暖房の設置は、エアコンの取り付け工事のように短時間で完了するものではありません。
輻射式冷暖房の導入から使用までには、熱負荷計算を踏まえた設計のみならず、施工の段階でもさまざまな工程を踏まなければいけません。
詳しくは「FUTAEDAパネル導入工事の流れと見積項目」へ
詳しくは「熱負荷計算とは?計算方法や注意点を解説」へ
弊社でも「F-CON」の施工時間を短縮できるように日々研究を重ねていますが、やはりエアコンの取り付けに比べると長い時間を要します。
すなわち、輻射式冷暖房は今すぐ使いたい方にとって不向きな設備と言えるかもしれません。しかし、輻射式冷暖房は建物と同じく一生ものです。
設置時間の長さや導入費用の高さといったデメリットもあるものの、耐久性に優れたパネル本体はエアコンの室内機よりも長持ちします(ただし、室外機の耐用年数はエアコンと同等)。
パネル本体が長持ちするほどトータルのコストは割安になります。そして、何をおいても従来の冷暖房機器とまったく別種の快適な暮らしがもたらされる点は、いくつかのデメリットを補って余りあるメリットだと弊社では考えています。
使用中によくある不満
電気代の高さ
実際に導入された方による「電気代が高い」といった口コミは、大きく分けて次の3つに原因があると考えられます。
- 適切な能力の輻射パネルを導入ができていない
- パネルの能力が見合っていないと消費エネルギーは嵩みます。
- 室外機の選定がうまくいってない
- 動力源となる室外機は地域よって選定方法が異なります。
- 適切な運転ができていない
- 省エネ運転 機能を上手く活用することで電気代は抑えられます。
適切な能力の輻射パネルが導入できていない
複雑な熱負荷計算を行っても、輻射パネルの能力が不足していると省エネ効果は得られません。
例えばどんなに高性能なエコカーでも、エンジンをふかしたままの状態 だと燃料の消費量は増えます。
それと同じく、パネルのサイズ・台数・設置場所などが合っていなければ、輻射式冷暖房を常に最大出力で運転せざるを得なくなります。
適切な能力の室外機を導入できていない
室外機の能力は地域環境 にも大きく影響され、外気温などを考慮した上で選ぶ必要があります。省エネ性を左右する室外機の選定を誤ると、電気代は高くなります。
詳しくは「輻射式冷暖房の導入に必要な3STEP」へ
適切な運転ができていない
1つ目の輻射パネルの選定と、2つ目の室外機の選定は、輻射式冷暖房メーカー・設計会社・施工会社側の問題です。
対する3つ目はユーザー側で改善することができます。
ほとんどの輻射式冷暖房は24時間運転に適した設計になっていますが 、冷暖房が不要な季節は電源を切り、冷暖房が必要な季節でも省エネ運転やタイマー運転を上手く活用すると、従来のエアコンよりも約10~20%省エネになるケースが多く見られます。
ただし、 輻射式冷暖房は小さいエネルギーを使って長時間運転することで快適な環境を保つため、電源を入れてから部屋全体の室温が調整されるまでに1~2時間を要します。
すぐに温冷風が出てくるエアコンのような即効性があるわけではありません。
その点を踏まえると、電源のONとOFFを繰り返すよりも、睡眠中、ならびにさほど長くない不在時には、 省エネ運転を使用したほうが節電につながります。
また、もともと1日に数時間しかエアコンを使っていなかった場合は、 24時間運転の輻射式冷暖房のほうが電気代は高くなります。
さらに、家を新築して面積が広くなった場合も、相対的に消費電力は大きくなる傾向にあります。
詳しくは「輻射式冷暖房は省エネ?電気代はどれくらい?」へ
効き目の悪さについて
「輻射式冷暖房は効き目が悪い」という口コミもゼロではありません。期待していた冷暖房効果が得られない理由は、次の2点が想定されます。
- 温熱環境設計の適切ではない
- 輻射パネルの能力が足りない or 能力が正確でない
温熱環境設計の適切ではない
建物の温熱環境を整えるには、熱負荷計算によって建物から出入りする熱を把握することが重要です。この工程を怠ると、輻射式冷暖房の能力は活かしきれません。
詳しくは「熱負荷計算とは?計算方法や注意点を解説」へ
輻射パネルの能力が足りない or 能力が正確でない
輻射パネルは面積が広いほど能力が上がります。さらに、表面の温度も暖房時は高く、冷房時は低くなければいけません。
詳しくは「放射エネルギーとは?計算式や特徴について」へ
空間に見合った輻射パネルの選定は、緻密な温熱環境の設計に基づいて輻射式冷暖房メーカーが行うものです。そのため、メーカー選びには慎重を期す必要があります。
まとめ
温度ムラや送風による身体的ストレスから人々を解放する、快適性に優れた輻射式冷暖房は、日本でも徐々に導入が進んでいる注目の設備です。
しかし、建物の状況に合わせて設計・施工する必要があり、メーカーを選ぶ際には高い専門性や提案力を確認しなければいけません。
輻射式冷暖房の特許も取得しているFUTAEDA株式会社では、住宅のみならず、病院や公共施設といった物件にも数多くの「F-CON」を導入してきました。
また、バリエーション豊富なパネルの中からインテリアや予算に合わせた製品をご提案しているほか、施工時間の短縮化を図り、従来よりもスピーディーな設置を可能としています。
ご興味のある方は、弊社までお気軽にご相談ください。
※この記事は掲載時点の情報をもとに作成しています。 建築環境や気候変動、経済情勢の変化、ならびに技術革新などによって、最新の情報とは異なる場合があります。予めご了承ください。