空調は一般生活に馴染み深い単語ですが、その種類は熱源(動力源)、熱を運ぶ媒体、何で空気調和するか(風か、輻射熱か)、仕組み、用途(家庭用、業務用)、空調エリア(個別、全館)といった要素で細かく分類されます。
本記事では、空調設備の構成要素を「室外機」「配管」「室内機」の3つに大別し、それぞれの細かい分類を解説しながら、空調設備の種類や仕組みについて解説いたします。
目次
空調設備とは
空調設備とは、大型施設などで採用されている冷暖房機能と換気機能を備えた設備を指します。その役割は、室内の温度・湿度・気流・塵などをコントロールして、室内空気を快適に保つことです。狭義では、冷暖房機能のみで換気機能のない小型の家庭用空調設備(≒ エアコン)も空調設備に含まれます。
空調とは
空調(空気調和)とは、温度・湿度・空気清浄度といった室内環境を最適な状態に調整すること、またはそのための装置を指す言葉です。
空調は「空気調整」の略と思われがちです。エア・コンディショニング(air conditioning)と英訳されるように「空気調和」が正しい正式名称です。
空調設備の構成
空調設備は室外機・室内機・配管の3つで構成されます。
次章では、3つの構成要素について解説してまいります。
室外機とは
室外機とは、空調設備に必要な冷熱・温熱を作り出す熱源機のことを指します。基本的に屋外に設置されることが多いため、室外機と呼ばれています。室外機は、入力(動力源)・仕組み・出力(熱を運ぶ媒体)の違いで分類され、さらに配管方式や室内機によって細分類されます。
熱源の種類
熱源には、冷熱源・温熱源・冷温熱源の3つがあります。冷熱をつくる冷凍機や、温熱をつくるボイラーなどが代表的な機器です。また、ヒートポンプのように一つの機器で冷熱と温熱をつくれるものもあります。
EHPとGHP
EHPとは | GHPとは |
EHP(Electric Heat Pump)とは、電気モーターで圧縮機を駆動させる仕組みです。 | GHP(Gas engine Heat Pump)とは、ガスエンジン(ただし、起動時には電気が必要)で圧縮機を駆動させる仕組みです。 |
EHPとGHPの違い
EHPとGHPの違いは圧縮機の動力源が電気か、ガスかの違いです。
ヒートポンプは空気から熱のくみ上げ(吸熱)、くみ下げ(放熱)を繰り返し行っており、下図のように「圧縮機」「凝縮器」「膨張弁」「蒸発器」とこれらを結ぶ配管から構成されています。
熱を運ぶ媒体
空調システムは、熱を運ぶ媒体によって分類されます。熱を運ぶ媒体には、主に水や空気、冷媒が使われ、この組み合わせにより4つの方式に分類されます。
全空気方式 | 全空気方式は、空気で熱を運ぶ方式です。 |
空気・水併用方式 | 水と空気の両方を併用し熱を運ぶ方式です。 |
全水方式 | 冷水または、温水といった水だけを利用し熱を運ぶ方式です。 |
冷媒方式 | 熱輸送に冷媒配管を使用する方式(代表的な例:エアコン) |
冷媒とは
冷蔵庫やエアコンなど機器の中で、熱を温度の低い所から高い所へ移動させるために使用される流体の総称です。
現時点での冷媒の主流は水素とフッ素と炭素の化合物(HFC:代替フロン)です。代替フロンの温室効果は二酸化炭素の140~11,700倍もあり、適正管理と新たな冷媒の開発が求められています。
配管とは
配管の役割は室外機で出力した「熱を運ぶ媒体」を室内機に運ぶことです。
※配管といっても様々な種類・用途がありますので、ここでは空調の配管に絞って解説いたします。
熱を運ぶ媒体や配管方式に着目して「室外機」→「配管」→「室内機」のつながり整理したものが下図になります。
配管とダクトの違い
配管のことをダクトと表現することがありますが、まったく同じものではありません。配管は空気などの気体だけでなく、水やガスなど様々な流体を通すことを目的としているのに対し、ダクトは気体だけを通すことを目的としています。また、ダクトは空調だけでなく、換気目的でも使用されます。
配管 | ダクト |
気体(空気など)、水、ガスなど様々な流体を通す | 気体(空気など)のみを通す |
2管式と4管式
2管式、4管式は配管方式を表しています。
2管式
往き配管と戻り配管が1組で、夏期は冷水配管として、冬期は温水配管として利用する冷暖房切替運転方式です。
4管式
往き配管と戻り配管が2組あり、1組を冷水配管として、もう1組を温水配管として利用する冷暖房同時運転方式です。
2管式と4管式の比較
2管式 | 4管式 | |
配管 | 往き配管と戻り配管が1組 | 往き配管と戻り配管が2組 |
運転方式 | 冷暖房切替運転方式 冷房または暖房のどちらかに統一 | 冷暖房同時運転方式 同時に冷暖房可能 |
熱源稼働 | 冷水、温水を切り替えて供給 | 年間を通して、冷水、温水を同時供給 |
コスト面 | 配管本数が少ないため、スペースも小さくて済むためコスト低 | 配管本数が多く、スペースも取るためコスト高 |
家庭用の空調配管は2管式がほとんどであるのに対し、業務用は施設によって2管式と4管式が採用されています。
3管式もありますが、冷熱源と温熱源を接続して戻り配管の水量を制御しなければならない点や、戻り配管の熱損失が大きくなるといった点で、現在はほとんど使われていません。
室内機とは
室内機とは、室外機から配管を通って運ばれてきた熱媒体を利用して冷暖房を行います。
どのような仕組み、形で室内の空気を調和するかによって種類が分かれ、最終的には「風があるか(冷気、暖気)、ないか(輻射熱※)」のどちらかになります。
※詳しくは「輻射熱(放射熱)とは?伝熱の仕組みや特徴について」へ
室内機の種類
室内機の種類によって、空調の呼び名が変わります。特に、「全館空調」と「輻射式冷暖房」については、最新の空調システムである表記や宣伝をされていることが多くなっています。
室内機の種類 | 説明 |
エアコン | 加温または冷却された冷媒ガスが通っている配管に風を当てることによって冷暖房を行います。 |
床下エアコン | |
全館空調 | 加温または冷却された風を各部屋にダクトを通じて送風することによって冷暖房を行います。 |
ダクト式空調 | |
FCU(ファンコイルユニット) | 加温または冷却された冷温水が通っている配管に風を当てることによって冷暖房を行います。 |
床暖房 | 温水(または不凍液)が通っている配管を床のパネルに通水して暖房を行います。 |
発熱する電気ヒーターを床の下に敷いて暖房を行います。 | |
セントラルヒーティング | 温水(または不凍液)が通っている配管をヒートパネルに通水して暖房を行います。 |
輻射式冷暖房 | 加温または冷却された水(または不凍液)が通っている配管を輻射パネルに通水して冷暖房を行います。 |
家庭用室内機と業務用室内機
室内機は、家庭用・業務用の違いや空調エリアの違いによっても細分化されます。
店舗やオフィス等でエアコンを使う際、家庭用エアコンの想定基準には該当しません。その場に合った必要な能力(馬力)を計算することがとても重要です。
「床面積が狭い=家庭用エアコンでOK」と勘違いして家庭用エアコンを設置してしまうと、まったく空調が効かない!といったトラブルが起きかねないため注意が必要です。
例えばエアコンの場合、家庭用と業務用では下表のような違いがあります。
家庭用 | 業務用 | |
能力目安 | ”一般的な生活をする部屋”を想定基準として、床面積(畳数)で冷暖房能力を決定 | 床面積、天井高、建築構造、業種、熱源の有無、使用用途等を考慮し、空調負荷計算をして必要な能力(馬力)を決定 |
導入 | → 部屋の畳数を目安に家電量販店で簡単に購入可能 | → 基本は専門業者が現地を拝見し適切な業務用エアコンを選定 |
馬力 | 約0.5~10馬力くらいまで | 10馬力以上 |
形状 | 基本は壁掛け形で、その他に天井カセット形、床置形もあり | 壁掛け形、天井カセット形、天吊り形、ダクト形、床置形など様々 |
電源 | 単相100V・単相200V | 三相200V・単相200V |
電力会社との契約 | 一般的な家庭と同じ契約 | 三相200Vを使用する場合、動力(低圧電力)か高圧電力の契約が必要 |
電気料金 | 単相は基本料金は安いが、電気を使えば使うだけ料金が高くなる。 | 三相は基本料金が高い一方で、使用量料金は低くなる。 |
耐久性 | 業務用と比較すると、耐久性は劣る。 | 熱や水などにも耐えられるように外装や内部構造もしっかりしている。 |
馬力とは
エアコンの強さを表す単位。「kw」がエアコンの能力を表す正式単位なので、メーカーによってはkwで表すこともあります。1馬力=2.8kwと換算され、約8畳分くらいの空調管理能力があります。
空調エリア
個別空調 | 全館空調 |
個別空調は、部屋ごとにオンオフの切り替え、冷暖房の切り替え、そして温度調節などができるタイプの空調システムです。 | 全館空調システムは、建物全体の空調管理を1ヶ所で行うタイプの空調システムです。 オンオフや冷暖房の切り替え、温度調節などはすべて一括で行うため、部屋ごとの操作はできません。 |
※詳しくは「全館空調とは?メリット・デメリットとメーカーの選び方を解説」へ
まとめ
一括りに空調といっても、熱源(動力源)、熱を運ぶ媒体、何で空気調和するか(風か、輻射熱か)、仕組み、用途(家庭用、業務用)、空調エリア(個別、全館)などの違いで種類は様々です。
空調設備の導入する際は上記の各機器の特徴に加えて、コスト面、メンテナンスだけでなく、建物の構造、地域の気象条件、さらに業務用の場合は業態、人数(男女比)、特殊機器の有無など、家庭用では間取りや生活スタイルなどの違いによる熱負荷を総合的に判断※して、最適な空調を選定する必要があります。
※詳しくは「熱負荷計算とは?計算方法や注意点を解説」へ
上記の複雑な条件下で最適な空調設備を選定するのは専門知識を要しますので、知識豊富な専門家に相談するのが最善の手といえます。
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